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茶道具 イロハ 

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※七種天目……窯変ヨウヘン・建盞ケンサン・烏盞ウサン・油滴ユテキ・
         灰被ハイカツギ・黄天目・玳皮盞タイヒサン


天目茶碗の覆輪を張る職人 の減少に伴う、覆輪の変更について、2年半前の本欄
        https://www.bansui.jp/diary-detail/1?category=1
で お伝えさせて頂きましたが、

この程 ようやく、桶谷定一 作の天目茶碗につきまして、

旧来の覆輪(上 写真の左)が 復活しました。


第2次バブル経済の人手不足や諸原料価格の高騰が、「手仕事」を殺し、伝統工芸界にはまだまだ辛い時代が続きますが、

まずは一つ、喜ばしい話でございます。



写真(左):【石橋静友堂 ねっと店】 茶碗 玳皮盞天目 梅花文  *桶谷定一*  たいひさん*玳玻盞*梅花天目*七種天目[cwn90005]
      https://seiyudo.ocnk.net/product/803

写真(右):【 同 】 茶碗 鼈甲天目  *桶谷定一*  べっこう*能盞[cwn90007]
      https://seiyudo.ocnk.net/product/801

●その他の「天目」: https://seiyudo.ocnk.net/product-list?keyword=%E5%A4%A9%E7%9B%AE&Submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2



すべての事象には 明るい面と暗い面が 含まれていて、当然 「未来」 も同様かと、

推察する次第ですが、

(ワタクシが感じている 「危機感」 については、当ブログや メールマガジン等で、わりと声を小さめに 再三 書かせて頂いているつもりですが)

茶道具業界 (あるいは工芸界?) について申しますと、

暗い面 の一つには、まちがいなく 「職人の減少」 ということが、挙げられるかと存じます。


昔に較べ アートが身近になり また口に糊する手段が多様化した おかげで、

たとえば 陶芸家さん等や それを志向する若者 なんかは 増えているのかも知れません。

現に 眼にする日用品や 身の回りの種々は、昔よりずっと デザインに優れ、「作家性」 の高いものが、

増えている気がいたします。


ここで申し上げたいのは、「職人」 の減少の話 でございます。

あるいは デザインもへったくれも必要としない

そして 形あるものすべて 手仕事によってなされる造形物すべて に、無くてはならない

「職人」 の枯渇 について でございます。


たとえば、茶道具に関して申しますと、

数年前より 「炭斗の内貼り」 をされる職人が 極端に枯渇する時代に 入っております。

また、「天目茶碗の覆輪を張る職人」 も同様です。


今までは 当たり前のように享受できていたものが 当たり前でなくなる「未来」 です。

(否、未来ではなく 現在のお話でございます…)

炭斗は 数年前より 良質のものが手に入り辛くなっており、そして

天目茶碗も 今後は、銀が打ってあるものでなく、銀が塗ってある ものとなります。(上 写真、ご参照)


「戦後レジュームからの脱却」 などと申している政治家がおるようですが

(私見では 「時は流れない それは積み重なる」 ものですので)

過去の行いは 決して流せないのです。脱皮するつもりが 骨抜きになるのが 関の山でございます。

しっかりと 積み重ねてこなかった結果が 今ある姿だと、捉えるべきでありましょう。


もちろん すべての若者が 「作家性」 だけを求めて、工芸界に入っている とは申しません。

分野によっては 次代の 名も無き職人が、頼もしく育っていると聞き及びます。

では、炭斗の内貼り や 覆輪つけ などの未来は どうか?


3Dプリンタ や ロボットなど、人間以外の 「手」 が、それにとって変わるのやも 知れませんね…



写真(左):【石橋静友堂 ねっと店】 茶碗 玳皮盞天目 梅花文  *桶谷定一*  たいひさん*玳玻盞*梅花天目*七種天目[cwn90005]
      https://seiyudo.ocnk.net/product/803

写真(右):【 同 】 茶碗 鼈甲天目  *桶谷定一*  べっこう*能盞[cwn90007]
      https://seiyudo.ocnk.net/product/801
▼ 旧ブログ 記事:2009/12/24 20:22 からの転載 ▼



4カ月ぶりの「お道具イロハ」は、楽茶碗の分類をひとつ……


●長次郎七種 (利休七種)

:利休が所持 あるいは選定した といわれる、長次郎作の7碗。

・黒:大黒・鉢開・東陽坊
・赤:木守・早船・検校・臨済


●長次郎外七種

:上記 「長次郎内七種」とは別に、「利休好み」の7碗を選んだものとされる。
 (利休と直接関わりのもたない と推定される碗も含まれる)

・黒:雁取・小黒・閑居
・赤:一文字・太郎坊・横雲・聖

【異説】

・鉢開・あやめ・まこも・再来・閑居・一文字・桃花坊・太郎坊・濡烏


●長次郎新選七種 (長次郎新組七種)

:表千家 吸江斎の門人 金森得水(1786‐1865:紀州藩領 伊勢田丸城 家老)が上記7種にならい選定したもの。

・黒:閑居・針屋・ムキグリ・村雨・風折
・赤:太郎坊・次郎坊


●ノンコウ七種

:樂道入 作の茶碗のうち、特に高名な7碗。

・黒:獅子・升・千鳥・稲妻
・赤:鳳林・若山・鵺


●ノンコウ加賀七種

:のんこう作の茶碗のうち、青山将監(江戸後期の加賀藩家老)が所持していたものとされる。

・黒:青山・今枝・香久山・霞・桔梗・此花・善福寺


●ノンコウ後窯七種

:長次郎の茶碗を、のんこうが写したもの のうち7碗。

・黒:貧僧・大黒・小黒・鉢の子
・赤:検校・早船
・不詳:小雲雀


●光悦七種 (光悦七作)

:本阿弥光悦作の茶碗のうち、特に高名な7碗。

・黒:不二山・鉄壁・七里
・赤:雪峰・障子・毘沙門堂・雪片

【異説】

・黒:雨雲・時雨・鉄壁・喰違
・飴:紙屋
・赤:加賀光悦・有明


●光悦十作

:光悦作の茶碗のうち、特に高名な10碗。

・黒:黒光悦・喰違・鉄壁・不二山
・赤:加賀光悦・有明・障子・雪片・ヘゲメ・毘沙門堂


●光悦五種

:光悦作の茶碗のうち、特に高名な5碗。

・黒:不二山
・赤:雪峰・雪片・毘沙門堂・障子


今年も拙ブログを ご覧頂き、ありがとうございました。
どうぞ 皆さま よいお歳をお迎え下さいませ!


写真:【石橋静友堂 ねっと店】 茶碗 赤楽「雪峰」光悦写 *佐々木昭楽* [cwn94002]
http://seiyudo.ocnk.net/product/874

※上記、長次郎・ノンコウ・光悦作のほとんどは、佐々木昭楽氏・川嵜和楽氏の写しがございます。
http://seiyudo.ocnk.net/product-list/47
▼ 旧ブログ 記事:2009/08/11 17:25 からの転載 ▼



ちょうど 昨日 ゲストブックより ご質問頂きましたので、
今回は、棗について でございます。

(ネタに詰まっていたので、ご質問 ありがとうございます…(笑))


棗というのは、薄茶器(薄器)の「代名詞」です。
きちんと ナツメの形をした棗 だけでなく、
ナツメに似ても似つかぬ形でも、○○なつめ と呼んだりします。

まず、
(ややこしい言い方ですが)
なつめ型の 棗に関して申しますと、
いわゆる「利休形」(後述)という風に、
400年以上前から 寸法(形)は決まっております。

どこの お茶道具屋さんで買っても、どこの美術館で見ても、
「中棗」と書いてあれば 決まったサイズで、
「大棗」と書いてあれば どれも同じ大きさです。


さて、
薄茶器 発生の歴史的経緯ですが、
薄茶器は、元々 濃茶入の外側の木製ケース「挽家(ひきや)」
からの派生だと考えられております。

(書付クラスの、さらに時代物の 茶入には 挽家が付随している場合が多いデス)

寸胴形の、ちょうど家にある「茶筒」みたいな形であります。

伝説によると、後醍醐天皇が 吉野山の金輪寺にて作らせた
といわれる「金輪寺」や
「中次」などの筒状の茶器が、棗の成立より先行します。
いわゆる 唐物茶道具 の隆盛期ですね。

やがて 茶の湯が和風化していくにつれ、
優しい形の棗が考案されるに至ります。


ここで、昨日 ご質問を受けた
「どうして 中次はナカツギと呼ぶのか?」ですが…

筒状で、合口(あいくち:=蓋と身の境目)が ちょうど胴の真ん中に切ってあるので、
ナカツギと呼びます。

中次の蓋に、面取りがしてあるのが「面取」で、
(もっと詳しく分類すると、合口が胴の真ん中にあれば「面中次」それより上だと「面取」)
さらに 底にまで面が取ってあるのが、ご存知「雪吹(ふぶき)」ですね。
フブキの中に居るように、「上下の見極めがつかない」という意味で……。

ちなみに、PCの自動入力ではフブキと打つと「吹雪」と出ますが、
茶器のフブキは、あえて前後の文字を入れ替えて「雪 吹」と書きます。
これまた、フブキの中で 前後の見極めがつかなくなった という表現のようです。


俗に 利休が制定したといわれる「利休形」ですが、

(表千家・不審庵文庫 によりますと、
(1)利休以前から存在する器物を、利休が認め「よしとした」物=「利休形」
(2)利休が創造・創作したもの=「利休好」
だということですが。)

薄器の形には(流派にもよりますが)さまざまな分類があります。

薄器6器:(雪吹・面中次・頭切(寸切)・薬器・白粉解 オシロイトキ・茶桶)
利休好12器(如心斎12器):(大棗・中棗・小棗・一服入棗・尻張棗・茶桶・大雪吹・雪吹・面中次・白粉解・薬器棗・頭切)
ほか 「仙叟12器」「如心斎32器」など


写真:左上より
「中棗」「一服入棗」「河太郎棗」「尻張棗」
「金輪寺」「中次」「雪吹」「薬器棗」
:【ねっと店】薄茶器のページ より抜粋: http://seiyudo.ocnk.net/product-list?keyword=%E8%96%84%E5%99%A8&Submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2

(河太郎とは「河童」のことで、頭が窪んでいる形状からの名称です。)
▼ 旧ブログ 記事:2009/06/15 15:35 からの転載 ▼



原木の質や量、環境問題、職人の減少……
「炭」
と並んで、先行きが不安視されるのが、
「羽箒」の供給です。

ワタクシの思春期の頃、「フェイク ファー運動」とやらで、
ニューヨークで、金髪女性が人造毛皮だけをまとい、
ほぼハダカで デモ行進しているニュースが流れ、
ずいぶん 目の遣り場に困った憶えがございますが……

動物愛護の観点からも、羽箒は 年々取れづらくなっている模様です。
価格は上がり、上質のものが少なくなっていきつつあります。


さて。
今回は、双羽/モロハ の羽箒について、です。

炭手前で使われる羽箒は、羽の向きによって、「炉用」「風炉用」「双羽」と3分されますが、
双羽は、「真」のお点前で使用されたりする、左右の羽根が同じ幅の羽箒です。
通常は、鳥の「尾羽」が使われます。
尾羽なので、左右の幅が同じなのです。

写真1は、「唐国鳥/カラクニドリ」 あるいは 「唐君鳥/カラキミドリ」
と呼ばれる鳥の羽です。
これは、身も蓋もない言い方をしてしまうと、
ズバリ「七面鳥」のことです。

七面鳥と言えば、どうしても クリスマスに
ワラの中に逃げる  あの唄を想像してしまいがちなので、
このように呼び換えられます。
お茶道具には、このような「呼び換え」が非常に多いですね…

双羽なので、「炉」「風炉」兼用の お稽古用として、
まず求められる羽根であります。

(ちなみに、写真2が「野雁」 写真3が「白鳥」です。)

ところで、上に『通常は、「尾羽」が使われます』と書きましたが、
上記 羽根が取れづらくなっている事情もあり、
必ずしも 尾羽だけでなく、個々の左右のバランスにより、
「炉」「風炉」「双羽」と、昨今では区分されているのではないでしょうか?

七面鳥は「飛べない鳥」ですので、
羽根の幅に 左右の大小がないのですね。

また、面白いことに、
「飛べない鳥」の中には、飛べる鳥と、左右の幅が逆になっているものがあります。
(「孔雀」しかり……です。)
わざわざ 商品の箱の中に、
「こちらは一見 ○が広いように見えますが、通常の鳥と反対であり、○用です。」
と注意書きが入っている場合があります。

残念ながら、現在「孔雀」の在庫を切らしているため、
写真でお見せできませんが、
「孔雀」といっても、あのオスの派手な羽根でなく、
絶妙に紋様の入ったメスの羽根が一般的です。

(以前、時代物の「オウムの座箒」というものがありましたが、
こちらは、虎の毛皮が似合いそうな、カラフルなものでございました…)

http://seiyudo.ocnk.net/product-list/35


●お道具イロハ●
ふだん何気なく やり過ごしている、お道具の基礎知識・豆知識を、もう一度ふり返るべく、
ワタクシ 石橋静友堂が、独断と偏見と早トチリで、一刀両断に解説しちゃうコーナーです。
▼ 旧ブログ 記事:2009/05/04 11:38 からの転載 ▼

象牙

今回は、茶入の「牙蓋/げぶた」について です。

例えば、紙箱入の茶入をお求めの際、
箱の中に、「ラクト蓋」という紙が入っていたことがありませんか?

試しに「ラクト(lacto)」という語を、Yahoo!辞書でひいてみると、
説明には「=乳(lactoprotein=乳たんぱく質)」と出てきます。

そうです。ラクト蓋とは、
乳たんぱく質を素材とした、「人工象牙」のことなのです。

ラクト蓋は、非常によく出来ています。
本象牙のように、マーブル模様が浮き出ています。
模様を描いているのではなく、質感も 象牙にかなり近いです。

(写真:左が「ラクト蓋」右が「樹脂蓋」中央が本象牙の「牙蓋」)

いわゆる「樹脂蓋」は、単に色が象牙色をしているだけで、
ラクトのようなマーブル模様はありません。
(仮に お茶入自体が同じ物だとしたら、樹脂蓋よりも、もちろんラクト蓋の方が
お値段がします。)

一見、非常によく出来た「ラクト蓋」ですが、
象牙と見分けるための ポイントがあります。

●マーブル模様に、対称性・機械的連続性 が認められる。
●光線を反射させると、象牙は 薄い繊維質が浮き出てくるのに対し、
ラクトはマーブル模様だけである。

象牙は、人間の指紋と同じですので、
決して マーブルが、規則正しく しかも左右対称に走ることはありません。
それに対し、ラクトは、あまりに模様がキレイに連続しすぎています。
見慣れてくると、両者の違いは、一目瞭然です。

古い上質の象牙には、上記の繊維質の他に、
「窠/す」と呼ばれる、いわば繊維の疵が 黒く一本(時に複数)縦に走っている
場合があります。
本来は疵ですので、象牙自体の質からみれば、欠点なのですが、
茶道具に共通する「不完全の美」でしょうか?
絶妙のバランスで入っている「窠/す」を、古来 茶人は愛してきました。

茶杓を載せないサイドに、この「窠」をもってくることが、
いわば「約束」であり、
きちんとした茶道美術館では、この「窠」の向きを、ちゃんと統一して展示してあります。

(まれにバラバラの時は、よほど展示替に慌しかったのかな?とか、
心得のない人が触ったのかな? とか、そんな見方も楽しいです……)

条約の規制緩和により、象牙の値段の一時ほどは高騰していない昨今ですが、
まだまだラクトの技術は進歩するのではないでしょうか?

でも、やはり本物の象牙の質感には、
いつまで経っても 及ばないことでしょう。

http://seiyudo.ocnk.net/product-list/52


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芦屋釜…古天命…天明釜…天猫…
お茶会の会記で、よく目にする言葉です。

あいかわらず 言葉足らずに説明すると……

茶道(茶之湯)成立以前から存在していた 「古作釜」 を分類すると、
「アシヤ」と「テンミョウ」に2分されます。


(1)芦屋釜
原産地 : 福岡県芦屋町
系統 : 唐(中国)系
特徴・見所 : 細やかに打ち出した「地紋」・端整な姿

(2)天命釜 (天明釜・天猫釜)
原産地 : 栃木県佐野市 (下野国 佐野庄 天命)
系統 : 高麗(朝鮮)系
特徴・見所 : 味わい深く荒れた「地肌」・素朴な姿


多くの茶道具がそうであるように、
永い歴史の中で積み重なった 伝説や憶測 「由緒」と、
学術的な研究成果とは、ズレが生じるのですが……
上記の「中国系」「朝鮮系」というのは、あくまで《風情》といった観点で捉えると
解りやすい気がします。

芦屋釜は、天目茶碗のような スッキリとした美しさ。=中国風
天命釜は、高麗茶碗のような 日常雑器を想わせる 自然な美。=朝鮮風

天命でも、地紋の打ち出してある物もありますが、どちらかというと素朴な物が多く、無地に近いです。
他方、芦屋は、つるっとした光沢のある肌が多く、肌合の面白さでは、天命に軍配があがります。絵画のような、完成された地紋の細やかさが、芦屋の見所です。

釜は、茶湯成立以前よりずっと古く、
鎌倉時代には、すでに かなり高度な技術で、面白いものが各地で焼かれていたようですが、
茶湯が勃興し、「京作釜」「関東作釜」が隆盛する以前の、2大 名産地が上記といえます。
芦屋釜は、(一説には、職人が各地に流れ) 「石見芦屋」「越前芦屋」「伊勢芦屋」等々 各地の釜作りに影響を及ぼしました。
同様に、本家の天命を「佐野天命」と呼び、神奈川県で焼かれたといわれる「小田原天命」という言葉もあります。


さて、また、
俗に 「テンネコ」 と呼ばれる天猫釜ですが、
こちらは、本来、テンミョウからの言い換えです。
天命・天明・天猫は、同一のものを指します。

ただ、永い歴史の中で、いつしか「天猫」という呼び方を、面白がる風潮が出来、
下記のように「天命」とは区別する場合もあります。

いわく「天猫」とは、
a.上記のような古い産地の古釜や雑器釜を、茶湯釜にふさわしく (底替など)仕立て直したもの。
b.京釜・関東釜などのうち、天命風のもの。

いずれにせよ、江戸中期〜後期、つまり本来の天命よりは後の時代のもの、が「天猫」と呼ばれている場合が多いようです。


在庫の2点を例にとると、

写真(上)が、芦屋釜  風で、
(「繰口丸釜」 作:初代 大西定林   極:13代 大西浄長)

写真(下)が、天命釜  風でしょうか。
(「尻張釜」 作:初代 下間庄兵衛  極:3代 下間庄兵衛)

古い釜は、現在のように、釜本体に作者のマークが入っていません。
古い名品ほど、底を入替えたりして大切に受け継がれているので、
他のお道具以上に、「書付」や「極め」が重要度を増します。

上の「丸釜」のように、「極め」に地紋や鐶付などのデザインまで 細かく書いてあれば万全ですが、(特に古い「極め」には)デザインにまで言及していない場合も多いので、注意が必要です。
また、下の「尻張釜」のように、「極め」が箱でなく、「折紙(極札)」の場合は、さらなる注意が必要です。
(最悪のケースでは、実測してみたら、「極め」と寸法が違っている…なんてことも、まれにあります。)

http://jidai.ocnk.net/product-list/6

●お道具イロハ●
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▼ 旧ブログ 記事:2009/04/01 13:00 からの転載 ▼



さて、今回は、<写・ウツシ>という語句について、振り返ってみましょう。

《お道具イロハ1》で書きました、仁清<写>・乾山<写>には、
狭義の意味と、広義の意味と、二つあります。

狭義:実際に、仁清や乾山の作品 (すなわち「本歌」) があり、
    それを再現しようと目論んだもの。
広義:その作風にちなむもの。すなわち 「仁清風の」 「乾山が描いたかのような」。

こと 「仁清」「乾山」に限っていうと、<写>という商品名だからといって
本歌がどこかに存在するとは 限りません。
あまりに二人の存在が偉大すぎて、「代名詞」になっているのです。

(何が「仁清写」で、どんなものが「乾山写」か。は、《イロハ1》をご参照ください。)

ちなみに、<写>の<写> なんてのもあります。
「仁清の本歌を、永楽家が写した」ものの<写>とか……。

さて。
<写> と全く同じ意味の言葉に、
<倣・ナラウ> と <摸・マネル> があります。
これは、「写す だなんて、おこがましい……。ナラワせてもらっているだけだ」 という
作家さんの 謙遜した言い回しです。
「とても 本歌ほどの存在には なりえませんよ」という。

ところで。
「名物茶入」の<写>を巧みにされる方に、笹田有祥さんがいらっしゃいます。
有祥さんは、また、仁史さんという ご本名でも、
同じように作品を焼いておられます。
どちらも、素敵な作品です。
http://seiyudo.ocnk.net/product-list/54

ちょっと お道具の世界のヤヤコシイ所なのですが……、
ご本名の物と、号での作品と、お値段が違う場合があります。(というか、明らかに「違い」ます。)
どちらが 高いかは、その作家さんによります。
周知の通り、○○作と○○窯作の場合は、「窯作」の方が、断然 安価となります。
「窯作」は、あくまで「工房」の作品ですので。
また、「別号」が、一人歩きし、あたかも そういう名前の作家が現存するかのような
ストーリー(作歴) ができてしまっている場合もあります。
いわく ○○の弟子だとか、○○の分家筋だとか、○○の弟だとか。
作り手や売り手が意図していなくても、いつしかストーリーが出来上がり、
それが「常識」になっている場合があります。
(○○焼・○○窯を「再興」した というパターンもありますね……)
過度に作者の名前に囚われてはならないという、警告かもしれません……。
いい作品・好きな作品は、誰が何と言おうと、誰が造ったものであろうと、
「いい」「好きだ」……それでいいのかも、しれませんね?


1左: (「摸 堅田肩衝 茶入」:笹田有祥 :桐箱)――本歌:中興名物 唐物
1右: (「槍の鞘 写 茶入」:笹田仁史 :桐箱)――本歌:大名物 古瀬戸
2左: (「早船 写 赤楽茶碗」:佐々木昭楽(別作) :桐箱)――本歌:楽初代 長次郎 作
2右: (「ムキ栗 写 黒楽茶碗」:佐々木昭楽 :桐箱)――本歌:楽初代 長次郎 作
3左: (「荒磯 写 黒楽茶碗」:佐々木昭楽 :桐箱)――本歌:楽3代 のんこう 作
3右: (「雨雲 写 黒楽茶碗」:佐々木昭楽 :桐箱)――本歌:本阿弥光悦 作
4左: (「保全 写 日の出鶴 茶碗」:上山善峰 :紙箱)――(大元の)本歌:野々村仁清 作
4右: (「初代長左衛門 造 仙叟好 写 飴釉渦文茶碗」:久楽弥七 :桐箱)――本歌:初代 大樋長左衛門

※「別作」とは、特別作・上作のことで、土・釉・焼きも違えば、箱の体裁・窯印まで 通常作と異なる作のことです。
http://seiyudo.ocnk.net/product-list/47


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▼ 旧ブログ 記事:2009/03/05 20:19 からの転載 ▼ (写真は転載なし)

決シテ 夜 一人デハ見ナイデ下サイ……
いろは歌の怪。

「お道具イロハ」ということで、今回は、いろは歌 自体を振り返ってみましょう。

いろは歌 とは、本当によく出来た歌で、
あまりの出来の良さから、かつては、弘法大師 空海の作だという通説が
信じられておりました。
(現在では、そうでないことが、ほぼ実証されています。)
全ての仮名を、過不足なく連ね、
その上で、仏教の「無常観」を織り込んであります。


色は匂へど  散りぬるを
我が世誰ぞ  常ならむ
有為の奥山  今日越えて
浅き夢見じ  酔ひもせず


さて。
皆様は、これを七五調でなく、
七音ずつに区切って読んだことが、おありでしょうか?
(私は、これを初めて知った時、本当にちょっとコワかったです……)

いろはにほへ と
ちりぬるをわ か
よたれそつね な
らむうゐのお く
やまけふこえ て
あさきゆめみ し
ゑひもせ   す


末尾の文字を続けて読むと
「とが なくて しす(咎無くて死す)」

つまり、無実の罪で政治的に謀殺された人物の、「無常観」だというのです。

(この他にも、5音の末尾だけを拾い上げて、別の暗号も隠されているという説もあります。)

7音や5音で区切り直すというやり方は、さほど不自然でもなく、
この暗号も いろは歌の完成度を高めている気さえ、いたします。

さて。
お茶の世界でも、様々な先人が、トガナクテ 命を落とさざるを得ませんでした。
利休居士、山上宗二、古田織部……

政情定まらない昨今ではありますが、命あっての物種……
先人のくさぐさの苦労や犠牲の上に、私たちがお茶を楽しめる環境があることに、
改めて思いを馳せたい 利休忌 であります。



●お道具イロハ●
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(唐胴 利休坐像       :紙箱)
(青楽 三具足   :川崎和楽:桐箱)
(赤楽 供茶茶碗 揃:川崎和楽:桐箱)
(画賛 利休坐像  :前大徳 積応:桐箱)
http://seiyudo.ocnk.net/product-group/17
▼ 旧ブログ 記事:2009/02/10 23:12 からの転載 ▼



図書十進分類法 だとか 動物系統樹 だとか…
人間は、何かを系統立てて把握しようとするのが、好きなのかもしれません。
(瀬戸茶入の「窯わけ」なども、そうですね。)

カタログなどに載っている お稽古物の茶碗で、
一番目をひくのが、京焼 (あるいは京焼風) のお茶碗ですが…
さらにそれを分類すると、 「仁清」と「乾山」 に2分されるかもしれません。

仁清は、ごぞんじ 野々村仁清。 乾山は、尾形乾山です。
カタログには 「仁清○○茶碗」 とか 「乾山写○○茶碗」 と、商品名が書かれています。
(この場合の《写・うつし》という語句については、また「お道具イロハ」で解説します。)
いわば 「仁清風の」とか「乾山が作ったかのような」 という ニュアンスです。

では、どんなのが「仁清風」で、なにが「乾山写」なのか?

仁清:絵が やや具象的 ・線が やや細い ・色が ややハッキリしている
   ・器躰が やや白い ・総じて 細やか

乾山:絵が やや紋様化されている ・線が やや太い ・色が 中間色っぽい
   ・器躰がグレイがかっているものが多い ・総じて 大胆かつ勢いがある

文字化するより、実際にご覧頂いた方が早かろうと……
写真(上)が「仁清写」で、写真(下)が「乾山写」です。

多くの京焼の作家さんが、仁清も乾山も焼かれていますが、
中には「乾山の方が得意だ」 とか 「仁清しか描けない」 という方もおられます……

ハイ!これで あなたも「仁清・乾山」博士 でございます!!


(「仁清 松竹梅絵 茶碗」:西村清翠 :桐箱)
(「仁清写 立雛 茶碗」:上山善峰 :桐箱)
(「乾山写 早蕨 茶碗」:橋本永豊 :桐箱)
(「乾山写 吉野山 茶碗」:橋本永豊 :桐箱)

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●お道具イロハ●
ふだん何気なく やり過ごしている、お道具の基礎知識・豆知識を、もう一度ふり返るべく、
ワタクシ 石橋静友堂が、独断と偏見と早トチリで、一刀両断に解説しちゃうコーナーです。