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: 「宗哲でございます……」 :

▼ 旧ブログ 記事:2008/08/21 18:49 からの転載 (写真は転載なし) ▼


●中村宗哲(12代:弘子)さん の話……

ぐ〜たら大学生だった頃に、稽古で通っていた茶室が、
桃山期の古い茶室で、
(後世に、さる華族の令嬢が「嫁入道具」として「持参」したという……)
その茶室「保存会」というのに、弘子宗哲さんも所属しておられました。

年に数回、その保存会の茶事というのが催される訳ですが、
下っ端ぺ〜ぺ〜だった私も、お手伝いに行かせて頂きます。
(茶事や茶会の「お手伝い」が楽しくて、お稽古が長続きしていたような有様で……)

暇なぐ〜たら学生で、下っ端ぺ〜ぺ〜なものですから、
けっこう朝早くから出て、露地や庭を清めたり、井戸の水を釣瓶で汲んだり……
茶事の直前からは「受付」です。
(やはり内仕事は、キレイに着飾った姉様方が担当される訳で)
保存会員の皆様の、お荷物を預かったり、庵主への ことづけものを頂いたり、
年会費のお支払いが何々とか、さて露地笠が足りないですよとか。
「和敬清寂」とはほど遠く ばたばた慌しく過ごすうちに、
先輩がフト
「さっきの方が『宗哲でございます』の宗哲さんやで」と。

手を止めた時には、もう端整な後ろ帯姿しかなく……
恥ずかしながら、その時初めて「え?女性の方やったんや」と知った次第。

その後、受付でお会いする度に、『宗哲でございます』の宗哲さんは、
こんな下っ端ぺ〜ぺ〜にも、優しく 気安く声を掛けてくださり、
ふんわりと柔らかな物腰で、それでいて
きっちりとした『型』のようなものを漂わせ、
……何か上品な主菓子のような お人柄でした。

残念ながら、今となっては「先代 宗哲」とお呼びせざるを得ませんが、
お稽古やお茶会で『宗哲でございます』の一語を聞くたびに、
その優しかった笑顔を思い出します……合掌


※写真は、現代作家さんの「家元好 写し」であり、宗哲さんの作品ではございません。
(左:淡々斎「苫屋棗」 右:鵬雲斎「五葉棗」)
※不審庵さま・今日庵さま「歴代宗匠好 写」の茶器は、次回掲載いたします。