ホーム > 茶道手帳 > 2013年1月 > : 河井寛次郎 記念館 1 :

: 河井寛次郎 記念館 1 :

▼ 旧ブログ 記事:2008/09/16 18:45 からの転載 ▼



河井寛次郎記念館を、ご存知ですか?

京都 五条 東山から一歩入ったところに在ります。
「民芸」運動でおなじみの 寛次郎さんの旧宅が、
(その空気までも)当時のまま公開されている場所です。

寛次郎の娘・孫 他、一族の皆様が運営されています。
(それも、バックヤードだけでなく、来館者と直に接する距離で、活動されてます!!!)

http://hcn.plala.or.jp/fc211/sagi/

……
ぐ〜たら大学生だった私も、自分の興味にはトコトン貪欲であり、
商学部でありながら、博物館学芸員のコースでは それなりに「成績優秀」だったので
あります……<記憶トハ常ニ美化サレルモノ也>

「成績良くてもしょせん他学部」。
第一希望の野村美術館・茶道関係の美術館は落ち、
実習は第三希望の寛次郎記念館に、お世話になることになりました。
記念館は、他館の何倍もの人数を、数期にわたって受け入れているので、
入りやすかったのかもしれません……

記念館での実習は《素晴らしい》ものでした。
他館での実習の様子も、後に知るのですが……私は、自分が第3希望に落とされたことに、
心から感謝しました。
「ハート」「魂」「愛」???etc.そういうものが、
記念館・館の皆様には アフレているのです。
(そして、学術的なことよりも、実践的な体験を、数多くさせて頂けました。)

実習中、芸術家としての寛次郎さんだけでなく、祖父として・父としての
寛次郎さんのエピソードが、よく話題にのぼりました。
例えば、家(現・記念館)の前に水道だか下水だかが引かれることになり、工夫たちが毎日やって来た。寛次郎は工事が終わると毎日のように、彼らをウチにあげ、楽しそうに酒を酌み交わしていた……等々。

とにかく寛次郎という人は、土を愛し・火を愛し・美を愛し、そしてそれ以上に、
人間というものを愛して止まなかったようです。
初対面の人でも すぐに家に上げ、酒を飲みながら色んなタイプの人の話を、
聞くのが好きだったようです。
理知的な柳宗悦、豪放な棟方志功、柔和な寛次郎……名も無き市井の人々。
幾夜となく繰り返される酒盛りの、楽しそうなこと!!!
「でもね。家族は大変だったのよ……」
笑いながら、懐かしそうに話してくれるのを聞いていると、
あたかも自分がその場に同席しているかのような、心地よい気持ちになりました。

……
寛次郎さんは、もはや「運動」ではなく、<民芸>その人でありました。
そしてその精神的なもの・人柄が、
そっくり子孫・一族たちに継承されているのです。
私ほど ぐ〜たらではないでしょうが、学生たちを毎年10数人も受け入れるのは、
本当に大変なことでしょう。その活動を、現在まで続けておられます。
そして、学生達との交流を、心から楽しんでおられます。

記念館は、オープン当初から、リピーターの多いことで有名だったようですが、
(私が久しぶりにお伺いした、五条「陶器まつり」の最終日も、たくさんの入館者の笑顔がありました。)
<ロハス><癒し>そんな現代のワードを超越した、独特の空気がそこには流れています。
そして、その空気は、いつ・何度行っても 変わらずそこに在ります。

疲れた時・何かに失望した時・自信がなくなった時・オゴっている自分に気づいた時……
ぜひ、館を訪問してください。たっぷりと時間をとって。
館を出た時には、さっきまでと違った「自分」がそこにいるはずです。

……
館は、私の「原点」です。たくさんの、かけがえのない物を授かりました。
いつか恩返ししたく……若輩ゆえ なかなか叶いません。
少しでも多くの人に館を紹介し、少しでも多くの人に「何かを授かって」もらえれば……
寛次郎さんも喜んでくれるでしょうか?

(館内案内 次回)