~ 茶之湯を未来へ ~
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: 茶の湯文化学会 会報 No.92 : 2017/03/27

【巻頭】
《 東京国立博物館 特別展「茶の湯」について 》 三笠景子 …P1~P3


・1980年(昭和55)に東京国立博物館で開催された特別展「茶の美術」以来 37年ぶりの大展覧会。その概要。

・第1章「足利将軍家の茶湯ー唐物荘厳と唐物数寄」

・「曜変天目 稲葉天目」「油滴天目」「灰被天目」「東山御物」「君台観左右帳記」について

・第2章「侘茶の誕生-心にかなうもの」

・珠光 紹鴎、室町から安土桃山時代にかけて 数寄の目で新たに評価されだした 唐物茶入・高麗茶碗・禅林墨蹟・釜の名品

・第3章「侘茶の大成-千利休とその時代」

・利休の茶を「利休がとりあげたもの」と「利休が創造したもの」の2側面から 捉える

・利休没後の「古田織部」「織田有楽斎」「細川三斎」の茶・桃山茶陶

・第4章「古典復興」

・「小堀遠州」「松平不昧」の茶

・第5章「近代数寄者の眼」

・「藤田香雪」「益田鈍翁」「平瀬露香」「原三渓」の茶

・1980年の展覧会では取り上げられなかった 近代に照準

・畠山即翁など次代に引き継がれた 茶の湯を 我々はどのように 未来へ繋いでゆくか



【投稿】
《 佛隆寺の茶臼 》 沢村信一 …P3~P5


・空海が唐から持ち帰ったとされる茶臼について

・「素材」「磨り面」「挽き木座 および装飾」

・考察の結論として 「寺伝に沿ったかたちで江戸時代中期以降に製作寄贈されたものと考える」



【例会】
●東京例会(2016/11/19)
《 渡辺驥と明治東京の茶 》 依田徹 …P5~P6

・渡辺無物庵は岩倉具視の支持で討幕運動に貢献 維新後は大審院検事長などを歴任

・明治10年代の東京の茶席では 多くの席で正客をつとめ 盛んに講釈もしていたという

・明治19年に小堀家の道具を買い取った 品数152点 額は四千円 だったとされる

・瀬戸茶入「在中庵」など

・死の一月前に 星岡茶寮で売立をおこない 日清戦争の賠償金による好景気で 価格は高騰

・明治29年6月に67歳で鬼籍に入る


《 栄西のもたらしたもの ―袈裟と茶堂を中心に 》 岩間眞知子 …P6

・栄西の「喫茶養生記」は密教医学に基づいて書かれたとする意見があるが 茶と桑の選択には やはり「禅の普及」という真意がある


●近畿例会(2016/11/12)
《 天目釉の再現 ー禾目天目と二種類の油滴天目 》 岩田澄子・岡崎友紀・田口肇・横山直範 …P6~P7

・京都市産業技術研究所では 釉薬の再現実験を行っている

・これまで 禾目天目の斑紋は釉薬の流下紋様で 油滴天目の斑紋は酸化鉄による釉薬の発泡により生ずると説明されて来た

・本発表では文献 伝世品 発掘調査を参照の上 実験を通して 禾目天目と2種類の油滴天目の釉薬について検討した

・日本に伝世する油滴は 大阪東洋陶磁美術館の建窯系と 大徳寺龍光院の北方系がある

・「君台観左右帳記」の「土之物」に記された「曜変・油滴… …」は産地順と考えられ 胎土の色に注目して吉州窯は建窯製とは異なると認識している

・実験の結果 釉薬成分や焼成条件の違いにより生じる 2種類の油滴発生のメカニズムが考えられる

・ところで 茶の湯には「曜変」として伝世した油滴があり 「曜変天目 堺油屋浄祐所持」の箱書をもつ名物(徳川美術館蔵)の実態は 北方の油滴である。茶の湯資料に記される「曜変」は、解釈の際に注意が必要である


《 白醉庵・吉村観阿の生涯 ―苦楽と夢楽― 》 宮武慶之 …P7~P8

・江戸後期に江戸で活躍した町人数寄者 吉村観阿については いくつかのエピソードが著名である

・出家の際 重源による「法華勧進状」を東大寺に寄進したこと。八十賀に際し 原羊遊斎に依頼し「一閑桃之絵細棗」を125個製作し知友に配ったこと

・観阿は道具目利きとして著名であり 松平不昧との交流ではしばしば奇茶人として紹介されるが 果たしてそれが実体なのであろうか?

・調査により 松平不昧 新発田藩10代藩主 溝口直諒(翠濤)をはじめ多くの人物の出入りが判った

・いずれも個人蔵の 「八十賀の茶会記」 茶会当日に使用された「福禄寿」(狩野山楽:画 三宅亡羊:賛)の他 共筒茶杓「山雀」 「祥瑞鳥摘茶器」など新出の資料が確認された



【例会のご案内】
●東京例会
・平成29年4月22日(土) 午後2時〜 (会場:五島美術館)
依田徹 「貞明皇后の茶道具について」
門井睦美 「大野鈍阿にいて」

・平成29年7月22日(土) 午後2時〜 (会場:五島美術館)
内田昌太朗 「美濃窯における織部茶入の定義と評価(仮)」
三笠景子 「茶の湯」展開催の意義と今後の課題」

・平成29年9月30日(土) 午後2時〜 (会場:五島美術館)
吉良文男 「未定」
砂澤祐子 「未定」

・平成29年10月28日(土) 午後2時〜 (会場:五島美術館)
福島修 「七宝の茶道具について」
石塚修 「川上不白『利休居士石浮図銘』について」

・平成30年2月24日(土) 午後2時〜 (会場:根津美術館)
鈴木愛乃 「紀州徳川家の菓子木型について」
岩間真知子 「日本における『茶経』の受容」

●静岡例会
 未定

●東海例会
・4月22日(土) 午後2時〜4時 (会場:名古屋文化短期大学)
 岩田澄子 「平重盛伝来の箱書を持つ内金張茶碗と馬蝗絆」

・6月24日(土) 午後2時〜4時 (会場:名古屋文化短期大学)
 西田宏子 「未定」

・9月30日(土) 午後2時〜4時 (会場:名古屋文化短期大学)
高木典利 「‐土と長石の先祖は花崗岩‐ 志野・織部・黄瀬戸を科学する」

・11月25日(土) 午後2時〜4時 (会場:名古屋文化短期大学)
岡宏憲 「未定」

●近畿例会
 未定

●北陸例会
・平成29年4月15日(土) 午後二時〜(会場:鯖江市文化の館図書館会議室)
 岩原 正吉 「京都東山西行庵・宮田小文法師新出史料について」

・平成29年5月13日(土) 午後一時半〜(会場:福井県越前陶芸村)
  吉江 勝郎 「越前古窯拠点施設(仮称)建設工事現場見学」

●金沢例会
・4月9日(日) 午後1時30分〜 (会場: ITビジネスプラザ武藏 スカイプラザビル5階 研修室1)
  谷 晃 「金森宗和に付いて」

・9月10日(日) 午前9時〜 (会場: 金沢湯涌江戸村 旧山川家住宅)
 「江戸村茶会」

・3月24日(土) 午後1時30分〜 (会場:近江町交流センター)
  田中秀隆 「岡倉天心・茶の本に付いて」

●高知例会
1.「茶の湯文化学会29年度大会の研究発表をテーマとしたシンポジウム」(会場:高知県立文学館 慶雲庵茶室)
6月25日(日)10時-12時 (軽食茶事 席主 4名  12時-16時)

2.文献研究 「 野崎兎園について 」  小松聡・野崎温子 (会場:高知県立文学館 慶雲庵茶室)
  9月3日(日)10時-12時