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: 茶碗の中の宇宙 -樂家一子相伝の芸術‐:


●「茶碗の中の宇宙 -樂家一子相伝の芸術‐」 展

:京都国立近代美術館
:2016/12/17 ~ 2017/02/12

:東京国立近代美術館
:2017/03/14 ~ 2017/05/21

http://raku2016-17.jp/


去年の大晦日に流行った 言い方でいうと
「空前絶後のォォ 超絶怒涛のォォ」

ご当代 樂吉左衞門さんの 言うところの
「私が生きている間に 二度とこれほどの規模の展覧会は開催できない」

大展覧会 です。


京都の大雪を心配しつつも、うまく時間がつくれたので 昨日行って参りました。

(ブログで展覧会のことを書く際は、「感想」だけでなく 一応 「紹介」という側面も意識しますが)

京都会場が 間もなく閉催されようとする今 記事にすることに

毎度のことながら 少し後ろめたさに似た気持ちを 抱えながら…。

 
さて、

上記 空前絶後の超絶怒涛の 二度と開催が望めない

龍やら麒麟やら一角獣やら鵺やら鳳凰やら… が一同に集った 珍しい展覧会ですが、

究極的には、見どころは 「長次郎 と 吉左衞門 と 惣吉」 に尽きるのでは ないでしょうか?


(京都会場に関していうと、所蔵作品である「コレクション展」とうまくリンクされており、
 標題の《宇宙》というのも 見どころの一つでは ありました。)


もちろん 「樂家一子相伝の芸術」と副題されているように

歴代の作品が全て並んでいる ことや、本阿弥光悦の一級作が並んでいる ことや、

あの 春屋宗園・長谷川等伯の「千利休像」までもに お出まし頂いていること

等々も、空前絶後の 理由の一つではありましょうが。


やはりスゴいのは 「長次郎」と「当代 吉左衞門」の作品群、

そして惣吉… (「次期16代」と わざわざハッキリ肩書きされた)篤人さんの作品

です。


まず、長次郎に関していうと、

子供の頃に目にした ウルトラマンのめったに現れない兄弟が ずらり勢揃いした

希少な 数の迫力 がありました。

ずらり並んだ 著名なそれらの1点1点が、スーパースター独特の「力」を 放ちまくっている

のですから、圧巻 の一言です。

(東京会場は どうなのか 判りませんが)

展示方法も ふだん樂美術館1Fでされているより やや低く 置かれ、

茶溜まりまで 詳しく覗き込める器躰が多かったのも 素晴らしかったです。

(贅沢を二点言うと、1.重要文化財クラスの碗は、「大黒」のように 1碗1碗ケースに入れて、全方向から見たかった…
 2.黒楽と一列に並んだ 赤楽「白鷺」・「太郎坊」は、細部がはっきり見えるライティングで「も」、見たかった…)


つぎに、ご当代に関していうと、

なかなか 佐川美術館は時間的に行きづらい場所にあるので、これだけ纏まって見られるのが、まず嬉しいです。

この展のテーマが 「一子相伝」ということもあり、

またご当代の作は 詩的で観念的で、ご自身が「葛藤」という言葉を使っておられる通り

他の歴代の作以上に 編年的に鑑賞・対峙するのが 望ましい…と私は思うのですが、

(作年がキャプションされてはいますが) 展示順は 意図してそうはなっていないので

鑑賞者の頭の中で それらを並び替え、いわば 「葛藤」を擬似的に共有して 見る

のが面白いと思います。

フランスで焼かれた作品群も、この展の見どころの一つでしょう。


最後に、「次期16代」篤人さんに関していうと、

私は 長次郎・当代 吉左衛門・光悦・のんこう・宗入に次いで 覚入が好きなのですが、

覚入から当代に「一子相伝」された 樂焼の核のような美しさを、その作品に ひしひしと感じます。

正直 すでに好きです。

次期16代が これから どう「葛藤」されていくのか? 実に楽しみで仕方ありません。


こんなことを書くと 不敬だなんだとネットで話題になる 政情ですが、

天皇陛下もまさに同様かと 推察する次第ですが、

いわば 負わされた逃げられない宿命から どれだけヒトは自由になれるのか?

大切な そして あまりにも重いタスキを どういった形で次のランナーに繋げていくのか?

それが この展の 最大にして唯一の 見どころだと感じた次第です。

(京都会場では リンクする「コレクション展」で、樂茶碗のもつ「宇宙」性が よく表されていましたが、
 そんな会場においても、一画では、
 長次郎と当代の2碗を対峙させ その間の空間を 高谷史郎さんのビデオインスタレーションで繋ぐ
 という 「長次郎 VS 当代」 あるいは 「樂家の一子相伝の駅伝」 が垣間見えました。)


いつも展覧会のブログでは、自分の好きな作品と オススメの作品を書いていますが、

今回の 自分の好きな作品:展覧会 じたいに拍手

今回の オススメ:(黒樂「大黒」のような)「個人蔵」の作品群

ということにします。

当代が「二度とこれほどの規模の展覧会は…」とおっしゃるのは 大袈裟ではないでしょう。

「個人蔵」のものは 特に必見です。

京都展と東京展では 一部の内容が異なってなり、また 展示替え期間もあるようですが、

個人的には 赤樂「鵺」が見れなかった ことが残念…。

でもまぁ 龍やら麒麟やら一角獣やら鳳凰やらが 一同に会しているシーンを見れただけでも

良しとするか。


写真:同 コレクション展より (どちらも「好き」なもの そして「宇宙」を感じたもの)

(左):野村仁 「真空からの発生」
(右):アンニッキ・ホヴィサーリ 「方壺」